Excelを開いた日から、僕は占いを"やめていないのにやめた"状態になった。
これは比喩ではない。——数字にした瞬間、行動が変わった。
「やめる」と決めたから変わったのではない。見たから、変わった。
なぜ計算しようと思ったか
きっかけは、3年目のある日の夜だった。
クレジットカードの明細を見ていたら、知らない請求が4件あった。全部、電話占いの会社だった。——知らないと言っても、自分がかけた電話だ。金額もバラバラ、日付もバラバラ。「先月こんなに使ったっけ」と思った。
そこで気づいた。——僕は、占いに使った金額を、一度も正確に把握したことがなかった。
月1万円くらい、と思い込んでいた。でも「くらい」で済ませていた。——じゃあ3年でいくらになるのか。計算したことがない。
その夜、Excelを開いた。
計算の方法
クレジットカードの明細を3年分ダウンロードした。
- 電話占い系の会社からの請求を全部抽出
- 対面占いの現金支払い(手帳・レシート・スマホの写真から推定)
- パワーストーン・お守り・御朱印等の関連出費
- 占い関連の書籍・アプリ・サブスク
これを全部Excelに並べて、月別に集計した。——所要時間、約4時間。
出てきた数字
書くのが嫌な数字だが、書く。
- 電話占い:合計 38万4,000円(月平均約1万700円)
- 対面占い:合計 12万円(年4〜5回・1回8,000円前後)
- パワーストーン・お守り:合計 7万2,000円
- 書籍・アプリ・サブスク:合計 2万8,000円
3年合計:60万4,000円
Excelのセルに「604,000」と表示された瞬間、声が出た。——具体的に書くと、「えっ」と。
この金額が意味するもの
60万円という数字を、別の買い物に置き換える。
- 新車の頭金:払える
- 海外旅行:ハワイ2回分
- 投資の初期元本:S&P500のインデックスに3年前入れていたら、2026年4月時点の試算では約90万円
どれも、僕が「欲しいけど金がない」と3年間ぼやき続けてきたものだ。
金が、なかったわけじゃない。——占い電話に消えていた。これを、3年間認識しないで過ごしていた。
「1回の値段」は気にしていたのに「合計」は見なかった理由
考察を書く。
僕は1回3,000円の鑑定を受けるとき、——「今月はこれくらいなら大丈夫」と毎回考えていた。月1万円の予算感覚で動いていた、と言ってもいい。
問題は、1ヶ月の感覚で判断していて、3年の累計の感覚を持っていなかったことだ。
これは、人間の脳の癖だ。行動経済学で「双曲割引」と呼ばれる。近い時点の損失は強く感じるが、遠くの累計は感じ取れない。——1日100円の課金は許せても、3年で10万円と言われると躊躇する、というアレだ。
電話占いは、まさにこの癖を利用できる設計になっている。——1回ごとに見れば、大したことない。合計を見なければ、60万円に気づかない。
Excelに入れた瞬間、脳が「合計モード」に切り替わる
面白かったのは、一度Excelで合計を出してしまうと——その後、電話をかけようとする瞬間に、脳が勝手に合計額を引っ張ってくるようになったことだ。
「3,000円使うか」と考えるとき、以前は3,000円のことだけ考えていた。今は、「604,000 + 3,000 = 607,000」が、無意識にチラつく。
3,000円を3,000円として見るのと、60万7,000円を見るのは、脳の判断が変わる。——後者では、確実に躊躇する。
この「合計を見る脳」に切り替わった瞬間、僕は占いを「やめていないのにやめた」状態に入った。
計算式を書いておく
これを読んだ人が同じことをやれるように、計算式を書いておく。
電話占いの月間コスト
1分あたりの単価 × 1回あたりの平均通話時間 × 月の電話回数 = 月額
例:350円/分 × 30分 × 月4回 = 42,000円/月
年間・3年累計
月額 × 12 × 年数
例:42,000 × 12 × 3 = 約151万円
実際にこの金額を使っている人は、珍しくない。「月4万円も使ってないよ」と思う人は——直近3ヶ月のクレジットカード明細で、電話占い会社の請求だけ抽出して合計してみてほしい。
想像より2倍多い、というパターンが僕の周りでは多数派だ。
パワーストーン・お守り類の総額
1個あたりの平均単価 × 所有数 + 買い替え・追加購入
例:1個5,000円 × 10個 + 年2回の追加購入3年分(5,000円 × 6回)= 80,000円
「見る」だけで、なぜ行動が変わるのか
心理学には「モニタリング効果」という概念がある。
ダイエットで食べたものを全部記録するだけで痩せる——これと同じ原理だ。記録する=監視する、という行為そのものが、行動を抑制する。意志で抑える必要がない。
僕は、占いで同じことが起きた。
Excelで合計を出した日から、電話する前に開くのが癖になった。開くと、そこに「60万4,000円」と書いてある。——この数字を見ながら「もう3,000円足そうか」と思える日は、少ない。
2年後の今、いくらになっているか
Excelを開いてから、2年が経った。
この2年間の占い関連支出は、合計7万8,000円だった。
ペースにして、3年で60万 → 2年で8万弱。——率にすると、月額の9割減。
やめた、とは書いていない。今も年に数回、電話占いを使っている。対面占いも年2回受けている。パワーストーンもデスクに置いてある。——全部、続けている。
ただ、合計を把握している状態で使う、ということだけが変わった。これで、使用額は10分の1以下になった。
この記事を読み終わったら、Excelを開いてほしい
提案は、1つだけだ。——クレジットカードの明細を3年分、ダウンロードする。
占い関連の請求を全部抜き出して、合計する。
所要時間は、多めに見ても1時間だ。その1時間で、あなたの占いとの付き合い方は——おそらく変わる。
見るのが怖い気持ちは、わかる。——僕もそうだった。
ただ、怖くて見ないまま3年続けた僕が、見た瞬間に10分の1になった。この事実だけは、伝えたい。
見たくない、という感情の正体
最後に。
「見たくない」という感情は、依存のサインだ。
アルコール依存症の治療で最初にやることの1つが、「この1週間に飲んだ酒の量を全部書き出す」だ。書きたくない、という抵抗が強い人ほど、書いた後の変化が大きい。
占いも、これと同じ構造にある。——見たくない、という感情は、あなたが何かに気づきかけているサインだ。
その気づきを、Excelが代わりにやってくれる。1時間で。
僕の結論
やめる、と決めなくていい。
見る、と決めるだけでいい。
3年で60万4,000円使った僕が、Excelを開いた日から「やめていないのにやめた」状態に入った——この地味な変化の話を、今日は記事にした。
あわせて読みたい
——「見る」と決めたあと、次に読むならこの2本。
本記事は個人の家計記録に基づく体験記であり、特定の占い師・業者を否定する意図はない。依存の状態に不安を感じる場合は、専門家(精神科・心療内科・公的相談窓口)への相談を勧める。